ワーキング・プア(Working Poor)とは、就労していながらも、貧困から抜け出せない人のことを言います。ワーキング・プアの確立された定義はありません。ここに示す統計データも、それぞれの研究者や機関がまちまちの定義を用いているので、その値を見るときには定義を吟味してください。大きくわけて、ワーキング・プアの統計は二つに分かれます。
1 個人の所得データを用いて、個人単位で計算する方法
「就業構造基本調査」などのデータを用いて、個人が得た所得が貧困線に未満の割合。「低賃金」で働く人の推計には適しているが、個人が働いた日数や時間がわからなったり、世帯所得を考慮していない場合には注意が必要。学生や主婦が、主な稼ぎ手ではなく第2、第3の稼ぎ手として働いている場合も、個人所得で見ると貧困となってしまう。
2 世帯の合算所得データを用いて、個人単位で計算する方法
世帯の合算所得で、貧困か否かを判断し、その中でもフルタイムで働いている人をワーキング・プアとする方法。
筆者(年) |
データ |
年 |
WP率 |
定義 |
村上・岩井(2010) |
就業構造基本調査 |
2002 |
5.00% |
通常(3か月以上)労働市場で活動したが世帯所得が保護基準未満の世帯に属する個人. |
阿部(2010) |
国民生活基礎調査 |
2007 |
現役世代男性 8.45%、現役世代女性 6.21%、 高齢者男性 4.34%、 高齢者女性 2.03% |
各属性の総人口の中で、一日の活動が「主に仕事」で、世帯所得が貧困線未満の人の割合. |
後藤(2010) |
就業構造基本調査 |
2007 |
19.00% |
主な収入が、賃金、農業収入、事業収入、その他収入雇用保険、?? |
伍賀(2007) |
就業構造基本調査 |
2002 |
29.5% |
個人所得が200万円未満の労働者の労働者全体に占める割合。雇用形態別推計. |
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労働力調査 |
2005 |
33.40% |
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駒村(2007) |
全国消費実態調査 |
1999 |
4.55%(普通世帯)、11.10%(単身世帯) |
65歳未満で世帯主が働いている世帯の世帯貧困率(普通世帯)、65歳未満単身世帯の世帯貧困率. |
駒村・四方・山田・田中(2009) |
全国消費実態調査 |
2004 |
世帯6.9%、 個人16歳以上(中央値50%)8.50%、個人16歳以上(保護基準)7.40% |
(世帯)世帯主に稼働収入がありながら、世帯所得が保護基準未満(生保世帯除く)、(個人)本人が就業、世帯所得が貧困線未満。性別、年齢別、世帯類型別、就業形態別. |
浦川・ 橘木(2007) |
所得再分配調査 |
2001 |
一般常雇(企業規模30に未満)12.6%、そのほか雇用形態別の推計 |
世帯主の雇用形態別の推計 |
連合総研(2006) |
就業構造基本調査 |
2002 |
単独28.5%、世帯47.1% |
1人世帯の最低生活費を満たしていない雇用者の割合、3人世帯の最低生活費を満たしていない雇用者の割合. |
(*)本表は、村上雅俊(2011)によるところが大きい。 |
阿部彩(2010)
●「第10章 ワーキング・プア対策としての給付付き税額控除」『参加と連帯のセーフティネット―人間らしい品格ある社会への提言』埋橋 孝文・ 連合総合生活開発研究所編、 ミネルヴァ書房、2010年6月,p.237-262.