捕捉率(ほそくりつ、take-up rate)とは、ある制度の対象となる人の中で、実際にその制度から受給している人がどれくらいいるかを表す数値です。生活保護制度の議論においては、生活保護の受給要件を満たす人の中で何パーセントの人が実際に受給しているかを表すこととなり、もし生活保護制度がすべての「貧困者」を対象としているのであれば、捕捉率=(生活保護の受給者数)/(貧困者数)、ということとなります。
多くの研究者は、このようにして捕捉率を推計してきました。しかしながら、実際には、生活保護を受給するためには、所得が生活保護基準未満である(所得のみで見た貧困者)、という以外にも、貯蓄要件(貯蓄残高が生活保護基準の1か月分未満)、就労要件(働けるか否か)、家族による扶養義務者の有無(家族の中で扶養してくれる人がいるか否か)など、さまざまな要件がつきます。これらをすべてクリアする「真の制度の対象者」をデータから判別することは不可能です。
2010年4月に、厚労省の中に設けられた「ナショナルミニマム研究会」への資料として、厚労省が(A)所得のみを要件とした場合、(B)(A)にさらに貯蓄要件を加えた場合、の2通りについて、「平成16年全国消費実態調査」および「平成19年国民生活基礎調査」を用いて推計しています。政府による推計はこれのみとなります。
低所得世帯率 |
低所得世帯数に対する 被保護世帯数の割合 (保護世帯比) |
|||
---|---|---|---|---|
データ | 所得のみ | 資産を考慮 | 所得のみ | 資産を考慮 |
H16 全国消費実態調査 (最低生活費1=生活扶助+教育扶助) |
4.9% | 0.3% | 29.6% | 87.4% |
H16 全国消費実態調査 (最低生活費2=最低生活費1+住宅扶助) |
6.7% | 0.7% | 23.8% | 75.8% |
H19国民生活基礎調査 |
12.4% | 4.8% | 15.3% | 32.1% |